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天皇論/秋篠宮が天皇になる日

「天皇論」第11章を読んでみると、
保阪正康氏が書いた文藝春秋の記事「秋篠宮が天皇になる日」を
徹底的に批判している。(侮辱しているといったほうがいいかも)

きっとこれを読んだ読者は、
「保阪はでたらめばかり書く奴だな。信じられん」とか、
「知識人を完全に論破するよしりんは凄い」とか、
そんな風に思うのかな。

でも、実際に保阪氏の記事を読んだ人ってどれくらいいるんだろう。
読みもせず小林氏の主張を鵜呑みにしてしまう人が大半なんだろうな。

そこで、その文藝春秋の記事(2009年2月号)を図書館でコピーして、
家でじっくりと読んでみた。

これを読むとよく分かります。
小林氏がどれだけいい加減なことを書いているか、が。

「天皇論」を絶賛する人たちは絶対に読むべきだね。
そして現実を知ろう。


小林氏は「天皇論」でこう書いている。
保阪は皇太子と秋篠宮の人格を比較して、要約すると「秋篠宮の方が優れているから天皇陛下がお悩みになっている皇統の行方を解消するには、いっそ秋篠宮の方が次の天皇に相応しいんじゃないかしら?」と勝手な願望を書いてるだけ。(178頁)

でたらめです(笑)

まず、この保阪氏の記事には、

◯皇統の行方を解消するには‥‥、などという話は、一切ない。
◯秋篠宮が天皇になれば皇統の行方が解消される、という話も一切ない。
◯それどころか、
「悠仁さまの代になると、皇族が他にいなくなってしまう」
「とても陛下が皇統の将来に安心なされる状況にはなっていない」
と、正反対の言葉が書かれている。
◯次の天皇に相応しいのはどちらか、などという意味のことも一切ない。

記事にはこう書いてある。
◯天皇に万が一の事態が生じれば、皇太子が天皇になり、秋篠宮が皇位継承順位第一位、悠仁親王が第二位となる。悠仁親王が皇太子となるのは、父である秋篠宮が天皇になったときである。近代皇室が経験したことのない皇統の移動が現実になるのだ。

◯現在、秋篠宮は依然として皇位継承順位第二位の存在である。皇太子が即位すれば、次の天皇候補として備えなければならない。

次の天皇には皇太子ではなくて秋篠宮がいい、などとは言っていませんね。
皇太子が天皇になったら次の皇位継承者は秋篠宮だ、と言っています。

何をどう読んだら小林氏のような要約が生まれるのか、理解不能です。
このような事が延々と続きます。

皇太子殿下がマイホーム主義で皇統に対する責任感が薄いとか、雅子妃の病気は祭祀に関心がないからだとか勝手に憶測し、憶測を元に、皇太子を排除して「秋篠宮が天皇になる日」が来るかのような記事をでっち上げているのだ。(178頁)

えっと
「皇太子はマイホーム主義」?
そんなこと、どこに書いてある?
会見で具体的なのは「家族に関するくだりばかり」としか書いてないけど。

「雅子妃の病気は祭祀に関心がないから」?
まったくもって理解不能。
雅子妃と祭祀がどうこうなんて一切書かれていない。
(病気と祭祀の関係とか、関心があるとかないとか、そんな記述も一切なし)
不思議だ。小林氏は幻覚でも見たのか?

そして、「皇太子を排除して」秋篠宮が天皇になるかも、
などという意味の事は、(上にも書いたように)どこにも書いてない。

勝手な憶測を書き、それを元に記事をでっち上げているのは
どう見ても小林氏の方なんですけど。


天皇にふさわしい品格があるのは皇太子か秋篠宮かなどという論議(180頁)

言動やら性格やらの比較はしますけど、
「どちらが天皇にふさわしいか」などという話はしていません。

保阪は、皇太子が公務のどれを減らそうなんてことを「具体的に」「自らイニシアティブをとって」言えると思っているのだろうか?(180頁)

これを読むと、まるで保阪氏が皇太子に対して
「自らイニシアティブをとって、具体的な公務削減案を示すべき」
とでも提言しているかのような書き方だよね。

でも、全然ちがいます。

小林氏は「具体的に」という語句を「どれを」にかけているけど、
保阪氏が書いた秋篠宮の「具体的に」は、
ある期間における「天皇の公務の負担」を具体的に説明した、と書いたわけで、
秋篠宮が公務のどれを減らそう、と具体的に言ったわけではありません。

さらに言うと、秋篠宮は
公務の数を減らすのは難しい
「分担も難しい」
「公務の中身を変えて負担軽減につなげていけるのでは?」
というような事を語っています。

秋篠宮は
「私たちが(略)陛下のお仕事の全体量を把握しているのか」
「私も少し調べてみよう」
「これから私たちも把握していくように努めていきたい」
というように、いう踏み込んだ発言をする。

対して皇太子は
「周囲が考える必要がある」「周囲が陛下とよくご相談しつつ」
と「どこか他人事のようなニュアンス」だと書いている。

つまり保阪氏が言うのは、
皇太子自身はどう考えるのか、具体的に言わないし、
自らはどうするのか、という積極性も乏しい、ということです。

元記事を読めば、誰でも分かります。
「具体的に」「自らイニシアティブをとって」どれを減らそうと言え、
という意味ではないことぐらいはね。

保阪は秋篠宮の方がいいなどと言う。(181頁)

大嘘です。
繰り返しますが、そんなこと一言も言っていません。

保阪が皇太子を貶め、秋篠宮を推す理由は「戦争」に対する姿勢の違いらしい。秋篠宮は先の大戦を反省する気持ちが強く、その言葉を皇太子より明確に述べられるから天皇にふさわしいと言いたいのだ。
要するに保阪は(略)都合がいい方を天皇にしたいという、ただそれだけの私情なのだ。(183頁)

秋篠宮は先の大戦を反省する気持ちが強い?
秋篠宮は大戦を反省する言葉を明確に述べる?

いやぁ、何度も何度も保阪氏の記事を読み直してみましたが、

どこを読んでもそんな箇所はありません!

対馬丸沈没の日や、原爆の日、終戦日、沖縄戦終結の日には、
必ず犠牲者の冥福を祈り黙祷をする、という姿は紹介している。
そして、天皇の戦争犠牲者への「追悼と慰霊」を継承しようとする姿勢がある、
とは書いてありますが、
(ちなみに小林氏は、天皇の慰霊に対する真摯な姿に感動の涙を流す。150頁)
反省する気持ちや反省する言葉などは、どこを探してもありません。

だいたい「戦争に関連した秋篠宮のコメント」自体ないというのに、
「大戦を反省する言葉を明確に述べる」などと言い出すなんてさ、
もう私にとっては理解不能なんですけど。

わしにとっては、先の大戦の評価など、天皇に軽々と口にしていただいては困るのだ。(183頁)

困るだろうね、小林氏とは考え方が違うだろうから(笑)

歴史家のはずの保阪は、先の大戦の評価まで、天皇の「聖断」を仰ぎたいのか? よく恥ずかしいと思わないものだ。(185頁)

勝手にどんどん話が飛躍していきます(笑)
「先の大戦の評価云々」なんて話は、この記事には一切ありません。

保阪氏は、天皇のサイパン訪問での黙祷に深い感銘を受けたそうです。
(同じく小林氏もその真摯な慰霊への姿に感動の涙を流す。150頁)
秋篠宮はその天皇の志を継承しようとしていると書いているだけなのに、
なぜ突然「天皇の聖断を仰ぎたいのか?」などと言い出すのか。

保阪は天皇や秋篠宮に「先の大戦の評価」をさせたがってる、と
勝手に妄想し、その妄想を根拠にして「恥を知れ」などと批判する。

もう笑うしかないのでしょうか・・・。

個人の人格が気になって、皇太子よりも秋篠宮に皇位を禅譲されよと勝手に妄言並べ立て(185頁)

「皇太子よりも秋篠宮に皇位を」ってさぁ、
どこをどう拡大解釈しても、そのように受け取れる箇所はない。

勝手な妄言を並べ立てているのは小林氏じゃないの?



恐らく、ほとんどの読者は「保阪記事」の現物を実際には読まない。
そして「天皇論」に書いてあることを信用して、
保阪氏はでたらめばかり書く奴だと思い込む。
だけど、ホントはそうじゃない。

小林よしのりという人は、たった10ページほどの記事でさえ、
これほどまでに事実と違う話を勝手に作り上げてしまう

また、前回記事の天皇号成立時期のように
それが少数意見だろうがおかまいなしに、
それを歴史的事実であるかのように紹介して通説は無視する。
(もちろんその好みの意見のみを参考文献として採用)

こういう事を平気でするんですよね。
とてもまともな人とは思えないし、まともな本とも思えない。

この本は「」なんです。

まだまだ続く。
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コメント 2

錬金術師

 仰る通りです。

 現に、天皇論自爆編(追撃編)で全く同じことをしています。

 他人が言ってもいないことをさも言ったかのようにでっち上げることを。
by 錬金術師 (2010-04-16 18:11) 

迷えるオッサン

訪問&コメありがとうございます。
貴ブログを拝見してこれだけ綿密丁寧に調べ上げたことに対し敬意を表します。他の記事も拝見したいのでお気に入りに追加させていただきました。
by 迷えるオッサン (2010-04-21 08:32) 

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