SSブログ

天皇論/君が代の意味

突っ込みどころ満載で、何から書こうかと迷うぐらいの「天皇論」。
最初だから序章からいきますか。
序章では君が代の意味について書いてある。
(P8)
大きな大きなわしの過誤があった。君が代の「君」を「天皇」限定だと思い込んでいたことだ。(中略)実は「君が代」は、古代から人々に愛誦され、江戸時代には相当広範な一般庶民が、自分の敬愛する人の長寿を祈る歌だったのであり、「君」は特に天皇に限定される意味ではなかった。わしはこの事実を全然知らなかった。

(P9)
わしが小学生の頃、すでに教師は日教組の活動をしていたようだ。ある日、担任の教師から「君が代」の意味を教わった。「君が代」というのは天皇の代のことたい。天皇の代が何千年も続きますようにという意味なんやぞ。

(P18)
「君が代」の歌詞の意味を高森明勅氏の著書、『天皇から読みとく日本』から説明しておこう。
「君が代」の原歌は古代にまでさかのぼるが、初見は延喜5(905)年、醍醐天皇の勅命で撰進された『古今和歌集』である。これは『古今和歌集』の「賀歌」に「よみ人しらず」で出てくる。賀歌とは長寿を祈る歌だ。
私の敬愛する人よ、千年も八千年も、小さな石が巨岩となって、さらにその表面を苔が覆うようになるまでの永い歳月を、どうか息災でいてください
…という意味で、「わが君」は「天皇」という意味ではない。自分にとっての敬愛すべき相手だ。

(P19)
この賀歌を国歌にしたのは、もちろん明治になってからである。

小林氏は
「君が代」の「君」を天皇限定と思い込んでいたのは大間違いで、
古今和歌集にある原歌のわが君は天皇という意味ではないから、
それを国歌にしたのだから「君が代」の「君」は天皇ではない。
これは自分の敬愛する人の長寿を祈る歌だ。
と主張したいみたいです。
というか読者にそう思わせたいようですけが・・・

騙されてはいけません


■古今集の原歌の解釈

「天皇という意味ではない」となぜ断言できるのだろう。
「わたしの敬愛する人のことだ」となぜ断言できるのだろう。

「わたしの敬愛する人」=「天皇」という可能性を完全排除ですか?
ちょっとおかしくなですか?

『古今和歌集』は醍醐天皇の勅命で編まれ、醍醐天皇に奏上されたものです。
それなのに、この「君」はあなた様のことではありませんって?

ちなみに
『古今集』序文仮名序に「をおもひ、をもいはひ」と説明され、
同じく真名序に「陛下の御字、(略)砂長じて巌となるの頌」とある。
(参考文献:「天皇・天皇制をよむ」東京大学出版会/2008)

仮名序や真名序を書いた古今集の選者たち(紀貫之ら)は、
どういう意図で、この
わが君は 千代にましませ さざれ石の いはほとなりて 苔のむすまで
という歌を賀歌22首の先頭にもってきたのでしょうね。

やはりもともとの由来は「君=天皇」なのだ、と考えるのが
ごく自然な感覚だと思われます。

私には「天皇のことではない」と決めつける理由が分かりません。


■戦前の教科書

小林氏は「君」を「天皇」と教えるのは日教組の教師だといってますが、
では戦前戦中の教科書ではなんと教えているか。
「君が代」は、「我が天皇陛下のお治めになる此の御代は千年も万年も、いやいつまでもいつまでも続いてお栄えになるように」という意味で、まことのおめでたい歌であります。私たち臣民が「君が代」を歌うときには、天皇陛下の万歳を祝い奉り皇室の御榮を祈り奉る心でいっぱいになります。(「尋常小学修身巻4」1937年)

「天皇陛下のお治めになる御代は、千年も万年もつづいておさかえになりますように」という意味(「初等科修身二」1943年)

戦前の教科書は「君=天皇」と教えていますね。
当時の教師は日教組だったのでしょうか(笑)
「君=天皇」と教えるのは日教組の教師だというのは単なる妄想です。


■現在の政府の解釈

国旗国歌法が成立したときの答弁を紹介します。
「古歌君が代が明治時代に国歌として歌われるようになってからは,大日本帝国憲法の精神を踏まえ,君が代の「君」は,日本を統治する天皇の意味で用いられました。
日本国憲法下においては,国歌君が代の「君」は,日本国及び日本国民統合の象徴であり,その地位が主権の存する日本国民の総意に基づく天皇のことを指しており,君が代は,日本国民の総意に基づき,天皇を日本国及び日本国民統合の象徴とする我が国のことであり,君が代の歌詞も,そうした我が国の末永い繁栄と平和を祈念したものと解することが適当であると考え…」 (平成11年7月21日  衆議院内閣委員会  内閣総理大臣)

文部大臣や内閣官房長官も同様の答弁をしています。
彼ら(自民党出身)は日教組なのでしょうか(笑)

というわけで、明治時代に国歌として採用されたときから現在まで、
国歌「君が代」の「君」はずっと「天皇」なのです。
戦前も戦後も「私の敬愛する人」などという解釈は存在しません。

だから小林氏が、
「君が代の「君」を「天皇」限定だと思い込んでいたことは、
大きな大きなわしの過誤だった」
というのは、過誤でもなんでもなかった。

国歌「君が代」では「君=天皇」限定なのです。


■和歌と国歌

和歌としての「君が代」は時代によって意味も変わるなどして、
天皇限定ではなく「自分の敬愛する人」の長寿を祝う歌にもなりますが、
国歌としての「君が代」は天皇限定なのです。

小林氏は(たぶん確信犯的に)
和歌としての「君が代」と、国歌としての「君が代」を混同させている。
しかし、引っかかってはいけません。

「君が代」と、「君が代」は、同一ではありません

当たり前ですよね。
もうそれは自由な解釈が許される、単なる一芸術作品ではないんです。


◯戦前の教科書は「君=天皇」と教えている
◯国の公式見解も、明治以来「君=天皇」である
◯国歌に採用以来「君=自分の敬愛する人」という解釈は存在しない


それでも国歌「君が代」の「君」は
天皇ではなく「自分の敬愛する人」だ、と思いますか?


思うのは勝手ですけど、国はそんな解釈していません。
そのことは知っておくべきでしょう。
小林氏の妄想に振り回されてはいけません。

客観的事実を知るべきです。


■「規律」を守る
(P11欄外)
「公共心」を代表する「国旗・国歌の尊重」を教えることすら罪悪視し、「自由」や「権利」だけを教え込めば子供は「規律」を守るという感覚を身につけられない。その結果、沖縄では小学生の飲酒が社会問題化するという事態まで起きている。

笑っちゃいます。

「自由」や「権利」だけを教えたら「規律」を守れない人間になる?
「国旗・国歌の尊重」を教えたら「規律」を守れる人間になる?
え? 小学生の飲酒問題の原因は「国旗・国歌の尊重」を教えないから?

そんなアホな!

何を根拠にこんな結論を導き出したのか
小学生の飲酒問題と「国旗・国歌の尊重」に何の関係があるのか?

「規律」を守れない原因は、すべて「国旗・国歌の尊重」がないからですか?

じゃあ自衛隊員の不祥事や、自民党議員の不祥事なんかも
国旗・国歌を尊重していないから起きるんですか?

全国で起きる未成年の飲酒問題、麻薬やいじめなんかも
ぜ〜んぶ、「国旗・国歌の尊重」がないからですか

小林氏は沖縄の教育が気に入らないのでしょう。
だから何か問題が起こると教育のせいにしたいのですね。
だけどそこに何か根拠があるわけでもありません。
ただ「こうであったらいいな」という彼の願望が入った妄想です。

まぁ、こんなことをわざわざ書かなくても、
普通の感覚を持った人なら誰でもすぐおかしいと分かることですが。

こんな適当に物を言う人が書いた本を、素直に信じられますか?
この作者は、きちんとしたことを書いていると思いますか?
信じてしまっていいのですか?


ちなみに、
私は小・中・高で「国旗・国歌の尊重」を教わっていません。
「君が代」も学校内で流れたことは一度もないと思います。
朝礼で国旗掲揚など見た記憶もありません。
(北海道でも沖縄でもありません。関東の学校です)

それでも一応「規律」を守れる人間になっていると思っています。
しかも「日の丸」は好きです。
これは小林氏と同じ意見だけど「シンプルで美しいデザイン」で目立つ。
世界の国旗のなかでも「日の丸」が最高だと思ってます。
「君が代」もべつにいいと思っています。

ただ、強制はするなということです。

日の丸に頭をさげなければ処罰されるとか、
君が代を声を出して歌わないと処罰されるとか、
君が代演奏時には起立しないと処罰されるとか、

そんな世の中には絶対反対だということです。

これじゃあ全体主義国家と同じですよね。

続く
コメント(1)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

コメント 1

えまのん

江戸末期ですと、遊女が客に対し、祝い歌として「君が代は~」と歌ったという記録もありますが。

それに天皇を指すなら、一般的には「君」より「大君」では?
(「君、死にたもうことなかれ」も君は弟、大君が天皇ですしね。)

九州王朝(大和王朝に併合された)の老君主が病床に臥せっていることに対して、快復と長命を祈願して「君が代は~」と歌ったものだとする研究もありますよ。

いずれにせよ、目上の者、主君筋を指す一般的な二人敬称とするほうが良いでしょうね。

by えまのん (2010-03-29 10:20) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

トラックバックの受付は締め切りました
カテゴリ一覧
政治,平和,憲法,歴史など‥‥‥特に分類していないものすべて
田母神論文騒動‥‥‥子供の作文みたいな論文を分析してみました
NHK台湾騒動‥‥‥なんか「Japanデビュー」が偏向だ捏造だと騒ぐ人たちがいますけど・・・
産経新聞につっ込む‥‥‥非論理的な「正論」とか言ってることおかしいよね
安倍(政権)批判‥‥‥選挙で大敗しても辞めないというので
内閣支持率‥‥‥安倍内閣のです
ひとりごと‥‥‥どうでもいいこと、テーマと関係ないこと
小林「天皇論」を読む‥‥‥思いきって「天皇論」を批判してみる

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。